世界最大の論争の1つは、農作物を栽培するのに遺伝子組み換え種子を使用することだ。基本的にモンサント社やダウ・ケミカル社といったアメリカ企業は、モンサント社のラウンドアップなど、特許を取得した自社の除草剤に耐性のある植物を生産するために、種子の遺伝子を操作する遺伝子工学を活用したいと考えている。何らかの理由で動物と植物の遺伝子を組み合わせるなど、他にも応用できる。問題は、こういった遺伝子組み換え食品の副作用について、実際には誰も分からないということだ。
ヨーロッパや日本はこういった遺伝子組み換え食品(GM食品)に反対してきたが、アメリカは受け入れるよう圧力を掛け続けている。TPP(環太平洋経済連携協定)に参加すれば、日本は結局GM食品反対の立場を覆すことになるだけである。それが交渉の余地のない、アメリカ主導の協定の問題なのだ。TPPには消費者がその食品は遺伝子組み換えされているのか、どこで育てられたのかさえ知ることができないような表示ルールも盛り込まれている。
しかし、ワクワクするような、技術の適切な活用法だと思える良いニュースが遺伝学からもたらされた。日本にはかなり有益なものになるかもしれない。
イギリスと日本の科学者は22日、より高収量ないしは気候の変化に強い作物に改良する迅速な方法を発表した。
最初に恩恵を受けるのは、昨年の津波で水田が海水につかったため、好塩性の稲を必要としている日本の農家になるだろう。
遺伝子組み換えを行わないこの技術は、植物に個別の性質を与えるDNA変異体を特定するものだ。
この知識を武器にして、ブリーダー(育種家)はこういった遺伝子を既存品種に挿入する伝統的な方法を活用することができる。
現在、品種として知られる1つの型を開発するには、5年か10年かかることもある。しかしこの「MutMap」法(ムットマップ法)によって、マラソンのように長い努力が1年余りの短距離走に早まるはずである。
イングランド東部のノリッジにあるセインズベリー研究所のソフィエン・カムン教授はAFP通信に対し、「本質的に、この手法は干し草の中にある針をもっと早く見つけるのに役立つ」と語った。
『Nature Biotechnology』誌に発表されたこの手法は、「ひとめぼれ」と呼ばれる日本の米品種に焦点を合わせている。
岩手生物工学研究センターの寺内良平氏率いる研究員たちは、自然突然変異率を早める化学的処置を行い、それぞれ異なる特性を持った「ひとめぼれ」の変異体を1500種作り出した。
より高収量の特性を持つ変異体に絞り込み、「ひとめぼれ」の原種と交配した。その結果得られた稲を自家授粉して育てた。
研究員たちはこの子孫のゲノムを「ひとめぼれ」原種のゲノムと比較した。ある地図の上に別の地図を置くように、より高収量になる遺伝的証拠をすぐに見つけることができた。
このプロセスは植物ブリーダーに時間面で大きな進歩をもたらす、と研究員たちは語る。
昔から、ブリーダーは確実に好ましい遺伝子がその品種に定着し、不要な遺伝子が取り除かれるように、何世代も植物を交配させなければならない。
しかしこの新手法を使うと適切な遺伝子がすぐに明らかになるため、好ましい結果を生み出すのに何世代にもわたって微調整する必要がないのだ。
この新手法で、寺内チームはたくさんの穂をつける短くてずんぐりした稲の特性を確認した。
1960年代に「緑の革命」をもたらし、中国やインドなど年中飢饉の瀬戸際にあった国々で米の収穫量を増加させたことで有名なのは、この特性だった。
その後、寺内チームは「ひとめぼれ」の中で高濃度の塩分に耐える一群を育ててきた。
研究によると、「ひとたび耐塩性に寄与する遺伝子が確認されれば、津波の被害にあった東北地方沿岸の約2万ヘクタールの水田で栽培するのに適した米品種の開発に活用できる」という。
カムン教授は、「MutMap」法はすでにその地域の条件に適応した作物を改良できるため、他の遺伝子発掘法よりも単純で、特に将来有望だと語った。
さらに、適切な遺伝子は「伝統的な品種改良によって」取り込まれるため、「この手法では遺伝子組み換えは全く必要ない」と付け加えた。
比較的小さく単純なゲノムを持つ他の作物も「MutMap」法にかなり適しているが、小麦やコーンなど複雑な種は難しいという。
カムン教授は、「MutMap」法は安価な演算能力と低コストな遺伝子配列解明技術だけを使って実行可能だと指摘。
「将来に向けて非常にワクワクすることだ。こういった技術は、ほんの数年前は不可能だった。作物の品種改良や農業に対する影響は途方もないものになるだろう。我々が抱える食糧安全保障の難題を考えると、かなり時宜にかなっている」と述べた。
















