「学歴神話」という気になる言葉が目に飛び込んできました。ここしばらく見聞きしない言葉です。受験戦争、一流大学、そして勝ち組に入るという考え方が広く支持された時代がありました。バブル崩壊と共に日本の経済社会的環境は変貌し、それまで通用した社会的概念や個人の価値観が問われる時代になって20年経ちますが、それに対する絶対的な答えはありません。なぜならば今日の日本では、一人ひとりが自分や家族の人生を責任をもってそれぞれが考えるべきだからです。政府や制度にはその答えはないからです。
教育は人生に必要不可欠です。日経は、子供の教育について悩む親の気持ちについてこう書いています:
一流大学に入って勝ち組になる――。過酷な受験戦争を経験し、「学歴神話」を固く信じてきた40代の母親は、子どもの教育に過剰ともいえる力を注ぐ。しかし、長びく不況やグローバル化の影響で、高学歴でも生涯安泰とはいえない時代となった。子どもに勉強する目的をどう教えたらよいか揺れている。
この記事にある40代の母親・父親はまさに「学歴神話」が信じられていた時代に受験を経験した世代です。高学歴が幸せで安泰な一生を約束してくれないことは分かっていても、先ずは学歴を付けるというプレッシャー下で育った人たちは、その頃競い合って勉強した充実感の余韻と現在親としてどうあるべきかのギャップに気が付いているはずです。
学歴一辺倒の姿勢には大きな落とし穴があります。それは、学歴と受験勉強が最優先されたときに、教育の真の意味と目的が忘れられる危険性があることです。学歴は必ずしも人をより賢くしてくれませんが、教育は必ず人の英知を高めます。教育は受験とは関係なく一生続きます。人は常に学ぶことで生涯成長を続けるからです。社会、経済、科学、医療、ITといった分野は常に動いているし、進歩も続けています。これらの分野を大学で履修しても、勉強を続けなければ知識は陳腐化し実践では役に立ちません。
真の教育の目的を考えさせるケーススタディをご紹介します: 今から10年ほど前、有名国立大学を卒業した人に出会いました。彼はそのことをとても誇りに思っていました。大学では、コンピューター科学を学んだそうです。当時彼は30歳前後でしたから、今40代ということになります。彼は、大学卒業後コンピューターとは全く関係ない仕事に就きました。その理由は自分が大学卒業した当時の日本のテクノロジーはアメリカと比べてとても遅れていて、自分のように頭がよくてコンピューターの知識の豊富な人間は日本の産業ではバカバカしくて働けないということでした。それで、コンピューターはやめて、頭を使わなくても稼ぎのよい仕事を選んだということでした。
彼がこの話をしてくれた時、大学卒業から既に数年は経っていました。それからさらに10年の月日が流れています。今や日本のコンピューター技術は誰も追従できない世界最速のコンピューターが作れるレベルです。20年近くもコンピューターの世界から離れている彼が、そこに戻ったとしても彼の知識レベルではもはや居場所は見つけられないでしょう。彼は、コンピューターに関わることを大学卒業と同時に止めているので、彼はそれに気付いていませんが、彼の技術的知識はその当時のままなのです。
彼には次のような質問をしたいです:
有名国立大学に進学した目的は何だったのですか?
大学では専門分野の知識に加えて何を学びましたか?
それが、今の人生でどのように役立っていますか?
高いIQと知識をもって、社会にはどのように貢献していますか?
テクノロジー常に開発途上です。開発と革新は日々起きています。あなたの自分の専門分野で日本の産業開発に貢献しそれを牽引することは考えましたか?
いま、あなたは自分を成長させるために何をしていますか?
あなたが人生で達成したいことは何ですか?
日経の記事は、今40代の親は、学歴神話が捨てきれず、子供に学歴を付けるためにかなり高額な投資をしていると続けています。ベネッセコーポレーションが2007年に行った意識調査で小学校高学年の子どもを持ち首都圏に住む40代と30代の母親を比べると、「子どもを4年制大学まで進学させたい」は40代が61.0%なのに対し、30代は39.1%。「できるだけいい大学に入れるよう、成績をあげてほしい」は40代が23.5%に対し、30代は12.8%と倍近くの差がある。「40代の母親は学歴志向で学力へのこだわりが強い」(沓沢糸・ベネッセ教育研究開発センター主任研究員)
より高い教育レベルを求めて親として出来る限りのことをするのは、子供への愛情であり、子供の人間的成長を助けたい気持からです。ただし、もう一歩踏み込んで考えると、学力と学歴が子供の一生にどのように役立つのかその位置づけが大切です。そしてそれを、どのように子供に伝えるのかで、子供が成長する過程でどのような人生観を形成していくのかに大きく影響します。また、子供が社会人となったときに自分の受けてきた教育をどのように自分の人生全体の目標設定に役立て、それをもって社会にどのように貢献できるのかを考得ることができれば、自分と社会との関連性も確立できます。
高学歴は教育なしには語れませんが、その反対は語れます。教育レベルを高める方法は「学歴」を積むことが唯一の方法ではありません。また、教育も学びを実践して他者と共有できる何かをアウトプットして初めて価値が出ます。教育は人の選択肢を広げ、人に自由を与えます。















